原告(貸主)は借家住まいをしオークション代行 メリット、自らの電気設備設計の事務所も賃借しており、被告から本件建物の明渡を受けた場合には、その後に新たにビルを建築して、これを居住及び仕事の事務所として利用したいとの希望を有している。もっとも、原告は、横浜市金沢区にも居宅を所有しており、現在は空家となっている。

 被告(借主)は、昭和55年10月、20年余の会社勤めを辞めて新たに鍼灸院を開業することを決断し、以後8年余の年月を経てようやく順調な経営が実現する段階に至っている。従って、この時点で右営業の場を他に移転し、改めて零からの出直しをするということは、経済的にも精神的にも被告にとっては極めて困難を伴う事柄である。


 以上のような原被告双方の事情を対比して考えると原告側における本件建物の明渡を求める必要性というのは、自らが使用する緊急の必要性があるあるというより、その敷地等のより有効な活用を図りたいという点にとどまるものと考えられるのに対し、被告側では、本件建物をその営業のための場として使用する極めて切実な必要性を有しているものと認めらる。この点からすれば、原告が被告に対して相当の金額の立退料を支払う意思を有していることを考慮に入れても、正当事由が備わっているとすることはできない。

 昭和57年の本件賃貸借契約の更新の時からオークション トラブル、被告は原告に対して、患者を離したくないので本件建物の建替えを行うのであれば新築建物へ再入居させて欲しいことを申入れている。
 (説明)
 本件は当組合員さんの事案で東借連常任弁護団の2人の弁護士が担当した。
 土地の有効利用のための建替えを理由とする明渡請求訴訟が多い中で、有効利用のための建替えよりも、借家人の建物を必要とする事情の方が優先するとした判決である。家主は控訴しなかった。賃借人は昭和11年から建物の1階を借り?夫死後三男と同居している。年齢は77歳?厚生年金を受領して生活し?長年心臓病で時折発作もある。通院する病院は?借家から徒歩10分近くにあり?転居を嫌い?今後も長年住み慣れた本件借家で生活するのを強く望んでいる。

 現在の家主は?もともとの家主から?借家人がいるのを承知して、昭和40年7月?本件建物を買取って、その2階を自分が経営する水産物卸会社の従業員寮として使ってきた。

 その2年後?家主は本件建物を取壊して?4世帯用のアパートを新築し?自分の会社の従業員寮として使いたいと?明渡しの要求をしてきた。

 家主は?それに加えて?建物の古さを強調し?床?壁は下がり?敷居は水平でなく建具は閉まらず?人が乗れば音をたててへこむ部分があり?鴨居も下がっている部分がある。雨漏りも激しく?1階部分裏側の土台?柱も腐蝕してもろくなっていて?建物は全体的に歪んで危険な状態である?と主張した。

 さらに?60万円の立退料を支払うので正当事由を認めてくれと?裁判所に申立てたが?家主の?以上の請求は認められなかった。

 (判決要旨)
 「本件建物は?昭和36年2階にした際土台を入れ替えるなどの修理をしたのでしっかりしており?柱に傾斜?損傷はなく?床?敷居等が下がっていることもなく?居住としての使用にも支障がない。
と一義的に言い切ることには,なお躊躇を覚える。不法行為の被害者が加害者から受けた給付が,不法原因給付としてその返還を要しない場合であっても,被害の性質や内容,程度,被害者の対応,加害行為の態様等から,その給付をもって損益相殺的処理をなすことが衡平に適う場面があり得ると考えられるからである。


 また正当事由の補充として60万円又は裁判所の適当と認める立退料を支払う用意がある旨の申出をしたことが認められるが?右立退料の提供によって本件解約申入について正当事由が具備するに至るものと解することはできない。」
 本件建物は?昭和8年頃建築され?36年頃2階が増築された。

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